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ループ(10ktの差)
これは、私がT−3にてエリアソロ(訓練空域での単独飛行)のときに起きた話です。
エリアソロとは、イニシャルソロを終えた学生が、次に行うソロフライト(単独飛行)で、イニシャルソロは離着陸のみですが、エリアソロは単独で訓練空域まで飛行し、今までに習った課目を行ってきます。(ただし、禁止課目として指定された課目はできません。私の場合は、特に指定はされなかったため、宙返りや横転などはもちろん、スピンも行えました。)
その時は、何度か行われた今までのエリアソロと同様に始まりました。教官から飛行前ブリーフィングを受けた後、搭乗する機体まで行き、各種点検を行った後離陸しました。
訓練エリアまで飛行した後、自分で実施した課目の出来栄えを自問自答しながら(一応飛行訓練ですので)淡々と課目を行っていきました。そして、次はループ(宙返り)の課目でした。T−3でのループは(薄れた記憶を辿ると)、回転数を2750回転、出力を32.5in-Hgくらいにセットし、どこかの一点に目標をとり、そちらに向かって最初は機首を上げながら旋回して一旦速度を落とし、目標の手前45度くらいから機首を徐々に水平線より下に下げて、目標に向いた時点で10度くらいの降下姿勢にして加速していきます。150kt付近でコントロールスティックを引き、水平状態で160kt、4Gになるように機首を上げます。後はその時の機首に対する景色の動きを再び水平飛行状態になるまで一定に保ちます。
課目実施前のセッティングを行い、目標に向け旋回を行いループを開始しました。最初の時点では問題なく順調のように見えましたが、飛行機が背面状態になる30度くらい手前で通常は少しくらいはあるコントロールスティックの蛇圧がいきなり完全になくなってしまいました。(引っ張っていたゴムが突然切れた様に本当に「スカスカ」状態で、前後に動かしても全く反応なし。)
「何が起きたんだ?」と、ふと速度計を見ると通常は背面状態で60ktくらいを示しているはずなのが、まだ背面状態にはまだ時間的に少しある時点(といってもほんの数秒間ですが・・・)で、既に50ktを切りかけていました。
「機首が水平線より下に向く前に失速する!」と思い、スピンなどの状態に入らないようエルロンは使わず、エレベータのみを一杯に引きました。機首が左右に揺れたらラダーを使って修正しようと考えてましたが、パワーはフルパワーにする余裕は時間的にありませんでした。次の瞬間、通常だと「クルッ」と一定の動きで機首が水平線をすぎるのですが、この時は、機首が若干水平線より上方を向いた状態から、いきなり地面の方向へ「ドスン」とフリーフォールのような感じで落されながら機種が一気に垂直姿勢に近い状態で地面に向きました。
機首が地面の方向を向いたので、一杯に引っ張っていたコントロールスティックを緩め、80ktくらいまで増速するのを待ち、スムーズ(十分な速度がない状態で急激にコントロールスティックを引っ張ると、また失速状態に入ってしまうので)にスティックを引いてリカバリーしました。
リカバリーした後、「どうしてあんな動きになったのだろう」と次の課目と現在位置を確認しながら自問自答で記憶を思い起こすと、引き起こし速度を意識しすぎたのか、開始速度(160kt)を引き起こし時の速度(150kt)で実施したのではないかという結論に達しました。原因が分ったので、残りの課目をこなしてその日の訓練は終わり、何事も無かったように帰投しました。
この時の出来事を今考えると、まずは決められた開始速度で実施することが大切であるという事は言うまでもありません。ただ、エンジン操作は、異常姿勢からの回復操作手順から、通常はフルパワーにすべきところなのですが、すごく短い時間で姿勢変化しスピンにも入りかねないような状況下とあの時の私の技量では、急激なエンジン操作によるエンジントラブル、誤操作によるオーバーブーストに陥る可能性など、また、スピンからの回復操作時のパワーセッティングはアイドル(空転)である事を考えると、あたふたしながら頻繁にパワーセッティングを変える操作よりは、そのままのセッティングの方が良かったのでは(?)と思っています。
何はともあれ、10ktの差による結果の違いを身を呈して思い知らされたフライトでありました。