My logbook

片ブレーキング。迫りくる滑走路端!

これは、私がT−1課程中のソロフライトでのお話です。
お話をする前の余談ですが、T−1の訓練を行った福岡県芦屋基地は、滑走路の長さが約5380フィート(約1620m)とプロペラ機のT−3で訓練した防府基地の約4850フィートに比べて約500フィートしか変わらず、T−3の約2倍のスピードが出せるジェット機のT−1にとっては相当短く、離着陸は一応可能ですが、余裕はあまりない距離でした。特に夏場のフォーメーションテイクオフは、浮揚してギアを上げ終える前に滑走路端を過ぎる位本当にシビアです(今回は、この話ではありませんが、このことを踏まえて本題に戻ります。)。
 T−1課程も中盤あたりのもうソロフライトも何度か実施されたころのソロフライトでの着陸滑走中にそれは起きました。
 その時のソロフライトは、滑走路に接地するまでは全く問題のないフライトでした。
フライトの最後をしめる着陸で滑走路に車輪を接地させ、少し「ホッ」とした後に減速しようとブレーキをかけたのですが、その時に通常とは異なることが起きてしまいました。「タキシング」でも話しましたが、飛行機のブレーキはラダーペダルに付いており、左のブレーキペダルを踏むと左主輪、右のブレーキペダルを踏むと右主輪にブレーキがかかるようになっております。そのためまっすぐ進みながら減速するには両足のブレーキを均等にかけなくてはなりません。接地した後その時もいつものように両足で均等にブレーキを踏んだのですが、何故かいきなり機首が右に曲がり始め、スピードも全然減速していなかったため、危うく滑走路から飛び出るところでした。私は慌てて両足のブレーキを放して左ブレーキとラダーペダルで飛行機の向きを滑走路と平行の方向に修正して、あらためてもう一度踏み直しましたが、まっすぐには進まずどうしても機首を右に向けようとします。
 この時点で、機体は滑走路の中心線から右側半分あたりを滑走路と平行に滑走し、少しは減速しましたが、残距離はもう半分を切り、パワーを全開にして再び離陸するにも距離的に不安で、また着陸復行中に滑走路をとび出すのを恐れたため、そのまま着陸滑走することにしました。右側のブレーキは少しでも踏むと右に曲がってしまうため、左のブレーキのみで減速し、ラダーも左にいっぱいに踏んだ状態で、ひたすら左ブレーキを必死に踏み続けました。滑走路端には、緊急時のための静止用ネットがありましたが、衝突時に機体を損傷させたくなかったため、可能な限りブレーキで停止できるよう操作して、それでも止まれないようであればネットを使用することにしました。
スピードは徐々には減速してきましたが思うようには減速せず、タキシング速度よりは相当速い速度でどんどん滑走路端が近づいてきました。
最後に懇親をこめて左足でブレーキを使用してなんとかタキシング速度より若干速い速度まで減速することができ、また滑走路から誘導路に出る方向が運良く右側だっため、緊急用静止ネットの使用はやめ、クリアリング中に両方のブレーキを使用し、滑走路をクリアしきったところでようやく通常のタキシングの速度に減速できました。
「一体あれは何だったのだろう?滑走路はクリアできたけど駐機場までタキシングはできるのかなぁ?」と誘導路上でまっすぐ進んだ状態で停止動作を再度チェックしてみると、不思議なことに今度はまっすぐ停止することができました。タキシングはできそうだったので、その後は通常にタキシングをして飛行機を指定の場所に駐機させて何もなかったようにその時のソロフライトは終わりました。
 このことを思い出すたびに最近まで「あれは何だったのだろう?」と原因を考えては分からずじまいでしたが、ある教官にそのお話をしたら、「前輪がブレーキング時の圧力に耐えられずに前輪の向きが曲がってしまったのだろう。」という話を伺い、その時の原因を知ることができました。
この時は、幸運にも滑走路を出る方向が右側だったことと、左ブレーキで何とか減速できたことで、このときは何とか事故にならずに本当に運がよかったです。もし滑走路を出る方向が左であれば間違いなく停止しきれずに滑走路をはみ出てしまうか、よくても緊急用停止用のネットにヒットしていたと思われます。それよりも何より最初の発生段階で着陸復行(着陸を断念して再び離陸すること。)をしていれば、よりベターな対処ができたのではと反省させられるフライトでした。

参照:
 ・ ラダーペダル


4:Prev


8:Logbook TOP
0:HOME